我妻教育〜番外編〜
ニヤニヤ笑う姉に、私は顔をしかめた。


「面白がらないで下さいな。

私は一瞬、お姉さまが家をお継ぎになるのかと思いましたわ。
だから今日帰ってきたのだと」



「あはは、ないない。
勘当された身だから私は。

それに私も、琴湖が家元になれば良いって言ってたでしょ」



「私なんてまだまだですわ…」


今日初めて名を上げて頂いた身。


姉は私を買ってくれてるけれど、家元だなんて気の遠い話だわ。



「謙遜しないの!
琴湖は誰より才能はあるし、家の用事も一番真面目にしてるじゃない。

一番家元に相応しいわ。

母さんだって、父さんの意見に賛成してるんでしょ」



「…ええ、それは、まぁ…」

そのようだけれど。


「でも、やりたいようにやれば良いのよ。

琴湖が家を継いでくれたら嬉しいけど、他にやりたいことあれば、そっちをすれば良いと思う。

選択肢が増えたと思ってくれれば良いからさ。

でも、あの母さんが人を認めるなんて、すごいことよ。
もっと自信持ちなって」


と、姉は励ますように私の肩をポンポンと叩いた。


お姉さま、貴女にそれを言われたくない。

言いかけて言葉を飲み込んだ。
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