我妻教育〜番外編〜
私たちは、再び歩き始める。


グリーン☆マイム本部に向かって。


綾人さんの車椅子の車輪を見ながら歩いていたら、


「琴湖ちゃんを見てたら、僕も何かしたいって、本当にそういう前向きな気持ちになれるよ」


前を向く綾人さんの視線がちらりと私の顔を見上げた。


「…だからかな、お母さんの気持ちも突き動かされたんだね」



「…?どういうことです?」

話の展開がつかめなくて、首をかしげた。



「言ってなかったけど、実はね、琴湖ちゃんのお母さん、もう一度うちに来たんだよ」



「えっ、もう一度って…?いつですか?」


綾人さんの顔をまじまじと見つめながら聞き返した。



「えーっと、確か…」綾人さんは、思い出すように、視線を宙に漂わせた。


「確か、孝市郎の所に出発するはずだった日の少し前。

君が倒れる前日だったかな?

お母さん、わざわざ事務所まで来て下さって、僕に挨拶してくれてたんだよ」



「そんなの、知りませんでした…」


お母さまが、綾人さんに挨拶しに行っただなんて。


……信じられない。



「お母さん、琴湖ちゃんには内緒で来たっておっしゃってたし、結局琴湖ちゃんも出発出来なかったから、今まで言わなかったんだけどね」
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