我妻教育〜番外編〜
―――雨だ。


突然の夕立。


まるでスコールのように強い雨。


瞬く間に、地面が濡れる。



「大変、早く本部に戻りましょう!」


私は綾人さんの車椅子を押して駆ける。



アスファルト蒸し上がる雨のにおい。


顔を打ち付ける大粒の雨水。



自然と笑いがこみ上げる。


何故?


おかしいのか、楽しいのか、訳がわからない。


わき上がってくる感情を自制することができなくて、私は声を出して笑った。


綾人さんも笑った。


二人して声を上げて。



顔の上でパチパチと音を立てる。


この夕立が、胸の中の砂漠にも降りそそぐ。


湿った大地から、どこからともなく何かが芽生らえそうで、言いようもなく高鳴った。


それは駆けるスピードとともに、加速度的に高まっていく。


胸が詰まるような、熱い想いが。


いつか砂漠にも花が咲くかもしれない。

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