我妻教育〜番外編〜
ボクが意気込んで答えると、新香サンは、あまり明るくない表情で微笑みながら目を伏せた。


そして、意外なセリフを口にした。


「啓志郎には趣味はないのよ」



「え?武道じゃないのかい?」


驚いて思わず聞き返した。



「心と身体を鍛えるためだけにやってるのよ」


「鍛えるためだけに…?」



「松園寺家の後継者として、より優れた人間になるためだけに、必要だろうと思うことを詰めこめるだけ詰めこんで、分刻みのスケジュールをこなしているだけ。

ズルもゴマかすこともなく。

あの子には、心の底からやりたいことって、ないんじゃないかしら。

いい意味で力を抜くことを覚えて欲しいんだけれど…。

私の言うことなんて聞かないし。

このままじゃ、いつかパンクするわ…」


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