甘いキスは放課後に
episode1(side:Sae)
昼。2時をまわった頃。
こんな時間に街中を友人の実莉と歩いているのは、無論サボったから。
午後の授業は体育と美術。体育はただのバスケで、美術もお絵描き。両方とも普通にできるもしくは完成済みの生徒に、受ける必要なし。よって問題なし。
制服姿の私達が昼間歩いていても、誰も何も言わない。別の高校の制服を見かけても、ああ、と思うだけ。暗黙の了解。
あまり口にはしたくないけど、安心するんだ。「ああ、あの子もサボってる。大丈夫、自分一人じゃない。独りじゃない」……気持ち悪過ぎる。だってほら、言いたくないでしょう、こんなにも若く醜い思考。集団で安堵の息を漏らして、集団だと怖くない。一人じゃないから?違う。皆怖いから。皆怖いのは一緒。皆一緒。誰一人も違わない。皆で怖い。
たとえ怖くなくても、それが一人だったら?怖くないのが自分一人だったら?……それが怖くなるのかな。怖くないのが自分だけということに怯えるのかな。
答えは永遠に出ない。なぜなら私が出さないから。出してしまったら最後、止まってしまう。固まってしまう。
大人になれば、当然になる。集団での暗黙の了解。大人は醜いのが当然だから、その思考も当然。でも子供は?まだ幼いガキは、いい。性格や環境がよっぽどじゃないかぎりはまず気付かない。大人でもガキでもない中途半端な子供、つまり私は、醜い。子供で「大人の当然」を当然としてしまえば最後。そう、最後だ。
だから気にしない。気にならないように、視線を外しまくって歩く。昼間の街中を、制服着て。