甘いキスは放課後に
「そう言えば」
唐突でもなく話題造りでもない、呼びかけが実莉から発せられる。
「紗恵さあ、どうやって保健室……というより、実習教師確保したわけ?
今気付いたけど、絶対とれないでしょ。
初日に、ランチタイムから昼休みまで私達以外誰も来ないなんておかしい」
「やっと気付いた?
まあ、苦労ではなかったけど。そこそこ大変だったよ」
華なのに退屈な女子高生。その現状に退屈。退屈過ぎて永眠するわ。と言わんばかりの日常に、突如降って出た若いイケメン保健医の、初日の昼を頂戴するのは、少しばかり手間がかかった。
暴れ狂う雌豚共……じゃなくて、興奮する女子高生を沈めるには、やはり。人々はこう呼ぶ。目には目を、歯には歯を。
「ほほう……つまり、恋愛には恋愛を。て?」
何やら理解し始めた実莉。惜しい。
「恋愛じゃあつまんないから、うーん……恋心には恋心を。てとこかな」
「どっちも変わらん」