甘いキスは放課後に


実莉に一抹を話す。その内容は、私が自分のためではなく実莉のためにどれだけ苦労したか……まあ、ようはイケメンに群がる女子高生をいろいろ裏で手を回して操作(気になってる男の子からランチのお誘いが来たら、誰だって惜しまず行くでしょ。そこらへんのイケメンなんて惜しまず)し、弱みを握ってる子には笑顔で脅し(あのさあ、例の件。憶えてるでしょ?あ、憶えてるんならいいの。昼食保健室でとろーっと)、その他……


ああ、案外動いてるじゃないですか。こりゃ尚更体育いらなかったわ。


「どうしてそここまでしたん?」


なんでもなしに聞かれた。だからそれには答えない。


「教えない。まあ、ファーストキス奪還目指して、日々精進したまえ。敵は多いぞよ」


「わかってる。はあ、ちょっと荷が重くなってきたかも」


「なんね、面白くない」


「初めてだからしょうがないでしょー。……それに。
 面白くないからこそ楽しいんじゃなくて?」


ちらと目が合った。お互いそのことに気付かなかったふりをする。


確かにそうだ。面白くないから楽しい。笑えないから楽しい。現実なら面白いわけなくて、自身のことなら笑えるわけなくて。だから楽しい。笑えて面白い恋愛が、楽しいだろうか?楽しめる恋愛なんて、あってたまるか。楽しめる恋愛、そこに心はなく、それはもうお遊びだ。


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