片恋綴
なんで、協力したりしたんだろう。

綺麗になる手伝いをした。

髪を染めてやり、化粧を教え、一緒に服を選んだ。

綺麗になってく彼女をずっと近くで見て、そのほうがいい、と嘘を吐いた。

だってそれは、その想いが叶うはずはないとわかっていたからだ。

僕は随分と意地悪で、絶対に叶わない恋の応援をしていた。

実際、彼女の恋は叶わなかったのだが、別の恋を見付けてしまったのだ。

それはあまりに想定外で、彼女の隣にいるのはいつも僕だけなんだと思っていたことを簡単に砕いてしまった。

いつから彼女を好きとか、そんなことも考えられないくらいに好きで、いつかは想いを告げるだろうと思っていた。

そしていつまでも隣にいられるのだと、勝手に思っていた。

それはとんだ思い上がりで、彼女は僕を異性としては全く見てなどいなかったのだ。

その証拠に、上がっていかないの、と綺麗に笑う。

恋の為に綺麗になった彼女はもう、届かないところにいるのだ。




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