片恋綴


「私には、好きな人がいます。恋人でもないし、想いが叶う可能性も無いに等しいですが、好きなんです。可能性が無いからと、簡単には好きでなくなれないくらいに。なので、貴方の申し出を容易く受け入れることは出来ません」

これは私の勝手な意見かもしれない。それでも私としては私の勝手な判断で彼を振り回してはいけないと思った。きちんと向かい合って、告げなければいけないと思ったのだ。

「……そうでしたか」

彼はぼそりと言った。

「これは私の我儘です」

そう言うと、彼は小さく微笑んだ。

「それなら、俺の我儘も言います。好きな人がいても構いません。貴女が彼をそう思うように、俺も貴女をそう想います。なので、本当に友達としてでいいです。なんなら、知人でも構いません。少しだけでもいい、たまに言葉を交わしてはくれませんか? 好きになってくれなんて言いません。ただ、貴女の世界に俺も僅かにでいいので、交ぜて下さい」


感性が何処か似ているのかもしれない。

私と彼は何処か似ている。それはまるで、無理はしなくていい、と言われているようで。



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