片恋綴


俺より少し小さくて、笑うと可愛くて、少しきついことを言うと軽く拗ねる。理由はあんまりないのかもしれないけど、確かに好きだという感情はここにある。

「ごめんね。モデルの子が急に体調崩しちゃってさ」

原崎さんはにこにことして言う。猫みたいな口をしている、といつも思う。

「あ、あの、でも、私なんかでいいんでしょうか?」

理生が顔を俯かせて言うと、原崎さんはいいんだよ、とにこにこしたまま答える。そして、本物のモデルよりポチちゃんのほうが可愛いし、と付け加えた。

すると理生は耳まで真っ赤に染めた。

……原崎さんは何とも思わずにこういうことを言える人。

だけどそのあとに、「ま、試し撮りだしね」と呟いたがそれはどうやら理生の耳には届かなかったようだ。

「真宏(まひろ)、それ、本物のモデルには絶対言うなよ」

顔を真っ赤にした理生など全く気にしていないのか気付いていないのか、口笛をふく原崎さんに怒りを含む声が降りかかった。

「あら、佐南さんだってそうおもいません?」

原崎さんはにんまりと口角を上げて言う。


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