片恋綴
「……絶対言うなよ」
恐ろしく整っていて、美しい顔をした佐南さんが苦い顔でそれだけ返した。佐南さんはプロのカメラマンで、原崎さんはそのアシスタント、そして俺は撮影スタッフのアルバイト。
昔から写真が好きでこのアルバイトを見付けた。時給は高くないし、終わりの時間も定まらない仕事だが気に入っている。そして俺もいつか佐南さんのようにカメラを構えられたら、と思っている。
「まあ、確かにお前が推薦しただけあって、その子は可愛いけどな」
佐南さんは腰に手をあてて、ふう、と息を吐いた。すると、理生が今度は頬を少しだけ染めた。
……大人って、何でこうも簡単に可愛いとか言えるんだろうか。
「早く衣装とメイク」
佐南さんはそれだけ言ってから、俺についてくるようにと指示をしてきた。理生と原崎さんが二人きりになると考えると、胸の奥が焦げ付く。
それでも、どんなにそんな感情を抱いたって意味はない。