片恋綴
なんか、大人って憧れる。
二十歳という年齢は世間から見れば、というか一般的には大人に分類される。酒も飲めるし、煙草も吸える。それでも俺自身はまだまだ子供な気がしてならない。
「お前、あの臨時モデルの子が好きなのか」
大人である佐南さんの指摘は適格過ぎる。俺はここで否定することを無意味に感じてただ頷いた。
もうずっと片想いをしている。
言おうと思ったこともあった。だけど言えなかった。言ったところで叶うはずもない想いだし、そうしたら今のような関係も忽ち消えてしまう。
だから伝えることが出来なかった。
臆病なだけ。
「ま、実際可愛い子だもんな」
ファインダーを覗く佐南さんの横顔は本当に整っていて、それでいて大人の顔。なんでこんなにも大人に憧れるのか。
原崎さんも大人だからだろうか。
大人だったら言えるとか思っているのだろうか。
「出来ましたよ」
原崎さんのやけに陽気な声がそんなに広くないスタジオに響く。