片恋綴



よく晴れた朝。

ベランダへと出る。最近はお隣である琴子さんがベランダへと出てくることはなくなった。

なのでいつもの景色を一人で眺める。勿論、佐南さんから貰ったカメラを構えて。

なんてことのない電車道。ぱちり、と一枚撮ってみる。勿論デジタルカメラではないのでどんなふうに撮れたのかはわからない。

今度は空を撮ってみる。やっぱりどんなふうな景色が撮れたかはわからない。


そして、自転車の音が耳に届く。


俺は静かにカメラを構えてシャッターを押した。そこには自転車を停めた理生の姿。

「カメラ、始めたんだ」

理生は何故か楽しそうに言ってきた。

「うん。いつか、物凄く綺麗に撮ってやるから、見てろよ」

俺がそう言うと、理生は頬を染めた。



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