片恋綴


「可愛げのない挨拶。ポチちゃんのがよっぽと可愛らしい」

それに対して原崎さんがそんなことを言うので私は耳まであつくなる。そこに他意なんてないのはわかっているけど、好きな人に可愛いと言われるのは嬉しいのだ。

「真宏には関係ない。というより、真宏に可愛いと思われることに意味はない」

千歳さんはやけにきっぱりとした口調でそう返した。それに原崎さんがほんの少しだけ表情を歪める。

「……だから佐南さんに見てもらえないんだよ」

「今は泉さんのことは関係ないでしょう」

小さないさかいが始まってしまい、私はどうしたものかと困ってしまう。止める術なんてないし、私が口を挟むことでもないような気がした。

それでも女性にそんな態度を取る原崎さんを見るのは初めてで、胸の奥がざわつく。



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