片恋綴
「そういえば、衣川君の好きな人は誰なの?」
千歳さんは不意に言い争いをやめ、店内を見渡した。衣川さんというのは、少し前にここで勤める琴子さんという人に告白した人のことだ。
原崎さんの友達のことまで知っているということは、千歳さんは原崎さんと親しいということ。そう考えると胸がちくりと痛んだ。
――私と原崎さんの関係なんて所詮、喫茶店の客と店員。
専門学校からの帰り道に見えるこの喫茶店に一目惚れし、運よくアルバイト募集をしていたので面接を受けてみたら採用された。オーナーも店員もいい人で専門学校を卒業してからもここで働き続けている。
そこに常連として通ってきていたのが原崎さんだ。
カメラマンのアシスタントをしている人で、笑顔が可愛くて、気さくな人。
……直ぐに惹かれた。