片恋綴
「……本当、逞しくなっちゃって困るね」
俺がぼやくと、理生ちゃんはふふ、と悪戯っぽく笑った。
「また口説いてるのか」
そこに、低く、声だけで真面目だとわかる人物が現れた。
「浩輔君」
浩輔君は断りもせずに俺の前に腰を下ろす。一人になれなくなった。こんなことなら、浩輔君にこの店を教えなければよかった。
まあ、浩輔君は俺がいるから此処に来るのではなく、愛しい人に会いに来ているだけなんだけど。それでも一人の時間を邪魔されるのは面白くない。
「真宏は本当に我儘だな」
不貞腐れた表情をわざと作る俺に浩輔君が言う。
浩輔君とは高校時代からの付き合いで、お互い何の気兼ねもしなくていい関係。それでも、言えないこと、言いたくないことがある。