片恋綴



「……千歳と別れるよ」

佐南さんが小さな声で言った。

「それを俺に言ってどうするんです?」

出来ればそれは美春ちゃんにこそ言うべきだ。まあ、言ったところで困らせるだけなのだろうが。

「ん、一応報告だ」

昔より近くなった距離に嬉しさを覚える。

ただのカメラマンとアシスタントの関係だけはなそうだ。うん、それだけでいい。

たまに笑えれば十分。

……何で人は報われないとわかっていても、それを簡単にやめることは出来ないんだろう。

好きという気持ちは何故こんなにも尊いと思えるのだろう。

「じゃ、もう上がりますね」

想いを絶ち切るように自分から会話を切った。少しは進歩しているみたいだ。

佐南さんが、ああ、と短く答えたのを耳にしてから帰る支度を始めた。






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