片恋綴



「千歳ちゃん」

柔らかい声で呼ぶと、千歳ちゃんは嬉しそうな表情を作った。

こんなに簡単に気持ちは軽くなる。たんに、自分で自分を追い詰めていただけなんだと知る。

「明日暇ならさ、何処か出掛けない?」

好きになってもらえなかった同士、同じ人を好きな同士、仲良くするのも悪くはないんじゃないか。

「え、うん」

千歳ちゃんが驚いたように返事をした。

明日、告げようと思う。

自分の正直な気持ちを。そして謝ろうと思う。

折角好きだと言ってくれた人に対して酷いことをしたことを。

誰かを好きでいたまま付き合うのが酷いこと、ではない。確かによくはないけど、俺はそれに気付いてなかったからまだセーフだと思う。

だから、別れるときに認めなかったこと、そのあとの行動。

それらをきちんと謝って、今度は友人として向かい合いたいと思えるんだ。



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