あなたのギャップにやられています
「冴子」
彼の厚い胸板に顔を埋めて心音を聞いていると、なんだか怒りが静まってくる気がする。
「冴子は遠慮してばっかりだ。
俺は冴子の素の姿を見たって、絶対に嫌いになんてならない。
冴子が意外とおっちょこちょいなことも、てきぱき仕事をするのにいつも不安そうにしてることも、我慢ばっかりしてることも……全部知ってる。
でも、冴子が好きなんだ」
彼の言葉にハッとする。
私……外ではいつも自分を取り繕うことに必死だったかもしれない。
デザインの才能がないこともコンプレックスだった。
だから、他の仕事をバリバリこなすことでその弱味をカモフラージュして、すごく無理してるのに、涼しい顔をして。
だから家では干からびて、休みの日だってなにもできないほどクタクタになっていた。