あなたのギャップにやられています

誰かになにかを頼んだり、わがままを言ったりすることは、こんなに簡単なことなんだ。

ずっと知らなかった。
全部自分でやらなくちゃって、ひとりで気を張っていた。


私……。
玄関のドアが閉まる音を聞きながら、ベッドに座り込んで考える。


必死だった。

元彼に酷い捨てられ方をしてから、ひとりで身を立てなければと必死に仕事をして。
それなのに、才能のなさに気が付いて落ち込んで……それでもなんとか自分を奮い立たせて、会社に見捨てられないように自分の場所を必死に確保して。


だからこそ、仕事もうまくいったのかもしれない。
結果として雅斗の役に立って、彼がデビューできたのかもしれない。


でも、ホントはすごく疲れていた。


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