あなたのギャップにやられています
第2章
ふたつの顔を持つ男
また慌ただしい日常がかえってきた。
なんとなく引っ越し準備の整った部屋をあとにして、ふたりで会社に向かう。
秘密にしておくと決めた私たちだけれど、雅斗は気にすることなく、私の手を引っ張ってデザイン部のドアを開けようとする。
「大丈夫。俺たちがそうなっているなんて、誰も気がつかないさ」
それもそうだ。
こんなに長く一緒にタッグを組んできたのに、そんな素振り、なかったのだから。
さすがに部屋に入ったときは、私の手を離したけれど。
「おはようございます」
「おはよ」
いつものように挨拶を返してくれる先輩も、私たちのことなんて眼中にない。