あなたのギャップにやられています

ふたりきりになると、形勢逆転。
会社ではこんな頼もしい彼を見たことがない。

ものすごい失礼だけど……。


いや、今日の雅斗は違ったか。
深谷さんのところに直談判に行った彼は、芯の通ったいい男だった。


「冴子、顔見てもいい?」

「ダメ。マスカラ取れちゃったもん」


本当はそんなことどうでもいい。
だけど、やっぱり泣き腫らした顔なんて見せたくないし。



「それじゃ、キスだけ」


そう言った彼は、有無を言わせず私を仰向けにして唇を奪った。

キスだけって……どういう、ことよ。
キスならしていいって言いましたっけ?

そう思ったけれど、このキスをきっかけに心のざわめきが消えていくのを感じた。


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