あなたのギャップにやられています

「冴子さん」


すぐに仕事の顔になった雅斗が、書類を私に差し出した。


「これ、データに起こしてもらえないですか?」


それは、朝見たあのジュースのデザインだ。


「了解」


スキャナーで取り込んで、雅斗と一緒に色の調整を始める。

パソコンで最初からイラストを描く人の方が多いけれど、雅斗はそうはしない。普通に絵を描くようにスケッチするのだ。
そのほうが思ったように描けるからと。


だけど、特殊な場合を除いて、全部手書きというわけにはいかない。
そこからが私の腕の見せどころなのだ。


彼独特の筆のタッチや色使いを損なわないように、それでも商品として世に出せるようにしなくてはならない。

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