あなたのギャップにやられています

深谷さんの会社との契約は、うちの社で1,2を争うほど大規模なもので、以前に雅斗のデザインで商品化したお菓子は大ヒットしていた。

その時の営業担当が転勤してゴリラに変わったのだけれど、こいつは本当に一癖も二癖もある。


「部長、あのっ」


私は思わず立ち上がって駆け寄り、「あの色では納得できない」と言おうとした。
だけど……。


「冴子さん」


小さく首を振ってそれを制したのは雅斗だった。


「部長。私もデザイナーの端くれです。
私のデザインがすべての人にウケるかといえば、そうではないこともわかっています。
だけど、自分が納得できないものを世に出すことだけはしたくありません」

「なるほど」


部長は雅斗を真剣な眼差しで見つめながら、うなずいている。

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