あなたのギャップにやられています
「あれは、本当に良かったもん」
「そんなことを言ってくれたのは冴子だけだろ?」
「うん、まぁ」
あの頃、同期で入ったもうひとりは既に三つの商品を世に送り出していて、木崎君は、デザイン部のハズレだなんて声もあった。
だけど私は、絶対に彼が認められる日が来ると、確信めいた予感があったのだ。
絵のことなんてなにもわからない私が言っても、説得力ゼロだけど。
「それに、俺がパッケージデザインをやりたいわけじゃないことにも気がついて、他に絵を描くことも勧めてくれただろ?」
「うん」
彼の絵は幻想的で、文字を乗せるのがもったいないなんて思って。
「それで、絵を描く道を捨てないでいられた。
あれから描いた最初のお気に入りがこれ」
そう言いながら、あの月夜の絵を指差した。