あなたのギャップにやられています
「あはは」
私が、派手な口紅をつけていた百合ちゃんを思い出して笑うと、「冴子だって取れてるし」と指で私の唇に触れる。
ゾクッとする。
彼にほんの少し触れられるだけで。
雅斗はティッシュで口紅を拭うと、「行ってくる」といって呼んでいたタクシーに乗り込んだ。
すぐに窓が開けられて、彼が顔を出した。
「電話するから」
「うん」
たった一泊なのだけれど、もうしばらく会えないんじゃというような別れのあと、私も会社に向かった。
「おはようございます」
デスクにバッグを置くと、早速簡単に掃除を始める。
フロアーの中は提携している業者さんが掃除を担当してくれているけれど、机の上などは自分達でするのだ。