あなたのギャップにやられています
「雅斗。もう仕事は一緒にできないけど、これからも私のために絵を描いて?」
私のために描いてくれる絵がこの世に存在するなんて、すごく贅沢だ。
それに、色々なしがらみに嫌気がさして、彼が筆を置いてしまったらすごく悲しい。
「冴子……」
「私、こうして雅斗と一緒にいられるだけで幸せ。だから、もう大丈夫」
ホントはちっとも大丈夫じゃない。
そして、それを雅斗も承知している。
だけど、私の経理行きはもう決まったことだ。
それなら前に進むしかないのだ。
「もう、寝よ。ちょっと疲れちゃった」
少しも眠れそうになかった。
だけど、もうこれ以上話しているのが辛い。
それに、雅斗にだって辛い思いをさせてしまう。
そう思った私は、彼に抱きしめられたまま無理やり目を閉じた。