あなたのギャップにやられています

「じょーだん」


彼が言うと、そうは聞こえないけれども。


「しばらくこうしていよっか」

「うん」


若干彼の息子さんが気になるけれど、雅斗に抱き締められるのって、本当に心地よい。


あー、でも……会社の事を考えると正直ブルーだ。
好きな仕事を取り上げられて、一番苦手そうな経理ってさ……。

あ、経理って、私を美術館に誘ってきたあの奥田さんがいるっけ。
そんなことに気がついて、ふと雅斗の顔を盗み見る。
ちょっと厄介なことになったりしないでしょうね。


「なぁ、冴子」

「ん?」


それきりなにも言わなくなった彼は、なにを考えているのだろう。

サラリーマンって、微妙だな。
働いてお給料をいただいて、だから人事だって基本的に文句は言えなくて。

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