あなたのギャップにやられています
「すみません、冴子さん」
彼が私のことを名字でなく“冴子さん”と呼ぶのは、私も木崎だからだ。
おまけに一緒に仕事をしているから、結婚しているなんて時々間違えられては、否定するのが面倒になりつつある。
「いいわよ。木崎君のせいじゃないし」
実は私は彼のデザインがかなり気に入っている。
クライアントからの人気が最近になってうなぎのぼりの彼の作品は、他の人では出せない味わいのようなものがある。
どこかノスタルジックだったり、ホッとする色使いだったり。
インパクトを常に求められる私たちの仕事で、彼だけが異質な作品を生み出しているけれど、どれも似通ったものの中では、彼のものがかえって目立っていいのかもしれない。