あなたのギャップにやられています
「奥にも行こう?」
私がそう誘うと彼は頷いた。
「これ」
「えっ?」
この美術館で私が一番気に入っている絵の前にたどり着くと、彼が突然声を漏らした。
「冴子が好きなのはこの絵だろう?」
「どうして……」
どうしてわかったの?
ここに好きな絵があることは話したけれど、どんな絵なのかは一言だって。
「冴子みたいだ」
彼がふと漏らした言葉に目を見開く。
私、みたい?
そこに描かれていたのは、ひとりの少女。
といってももう成人したくらいの。
少女だと思うのは、なんの汚れも感じないからなのかもしれない。
淡いブルーのワンピースに身を包んだ彼女は、首をかしげて真っ直ぐになにかを見つめている。
そしての姿はどこか憂いを含んでいて。