あなたのギャップにやられています

「雅斗、もうひとつおねだりしたい」

「なに? 高いものは困るけど」

「あはは。違うよ」


雅斗に絵を描かせてあげたい。
でも、へこんでいる今日は、もうひとつだけわがまま言っちゃおう。

その後は気持ちを切り替えて、雅斗を応援しなくちゃ。
いっぱい充電して、私自身も頑張らないとね。


「雅斗、あそこに連れて行って」


私がそう言うと、彼はどこのことだかすぐにわかったようだ。

愛車のビートルに私を乗せた彼は、すぐに丘に向かった。
彼のお気に入りのあの丘に。


「うわー、もう夏の日差しだね」


彼と初めてここに来たのは、まだダウンコートを着るような寒い日だった。

だけど、太陽の光が燦々と降り注ぐ丘は、青々と茂った草木のせいもあって、夏の息吹を感じる。

< 403 / 672 >

この作品をシェア

pagetop