あなたのギャップにやられています
「雅斗、もうひとつおねだりしたい」
「なに? 高いものは困るけど」
「あはは。違うよ」
雅斗に絵を描かせてあげたい。
でも、へこんでいる今日は、もうひとつだけわがまま言っちゃおう。
その後は気持ちを切り替えて、雅斗を応援しなくちゃ。
いっぱい充電して、私自身も頑張らないとね。
「雅斗、あそこに連れて行って」
私がそう言うと、彼はどこのことだかすぐにわかったようだ。
愛車のビートルに私を乗せた彼は、すぐに丘に向かった。
彼のお気に入りのあの丘に。
「うわー、もう夏の日差しだね」
彼と初めてここに来たのは、まだダウンコートを着るような寒い日だった。
だけど、太陽の光が燦々と降り注ぐ丘は、青々と茂った草木のせいもあって、夏の息吹を感じる。