あなたのギャップにやられています

駐車場から少し歩くとやがて視界が開けてきて、眼下に町並みが広がった。

そういえば、ひとりで来て雅斗に怒られたな。
初めてここに来たときも、怒られたときも夜だったから、昼間のこの丘は新鮮だ。


「うーん。すごく気持ちいい」


大きく息を吸い込むと、肺の隅々まで浄化されたような気がする。

まぶしいほどの太陽の光がチラチラと目に飛び込んできて目を細めると、丘の真ん中に君臨する大きな木の下に彼は座った。
これは、ブナの木だろうか。

そういえば……
リアンのマスターが見せてくれた雅斗が描いた私の絵。
あれはこの木の下の私だった。


今こうして実際の場所に来ると、あの絵の素晴らしさが改めてわかる。

日陰になっているとはいえ、葉と葉の間からこぼれる太陽の光が私の頬を照らしてくる。
そして、下から見上げると葉の影と太陽の光が美しいコントラストを作っている。

そして、少し湿ったような風が髪を揺らしていくのが心地よい。

そういうことまですべて、あの絵に描きこまれていた気がするのだ。


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