あなたのギャップにやられています
しばらくブナの木の下でボーッと空を流れる雲を眺めていた私たち。
私が足を投げ出して座っていると、彼が私の太ももに頭を乗せてきた。
やだ。恋人みたい。
あっ、私たち恋人同士か。
だけど、膝枕なんて初めてだ。
「冴子」
「ん?」
私を下から見上げる彼は貴重だ。
「キス」
「はっ?」
「ほら、キス」
高校生みたいに"初々しく"っていうわけにはいかない気がする。
この、エロ星人め。
私はキスの代わりに、彼の口と鼻を手で塞いだ。
「んんんん」
プハ。
私の手を思いっきり跳ねのけた彼は「やるな」と言って私をガッシリ捕まえたあと、優しいキスを落とした。
結局、私に主導権が握れるはずもなく、隣に座った雅斗の方にもたれかかって、彼に身をゆだねる。
会社とは違う「木崎雅斗」が、私を優しく包み込んでくれるから。
雅斗を信じてついて行けば、私はきっと大丈夫。
そんな気持ちにさえなるのだ。