あなたのギャップにやられています
ドアを開けることを一瞬とまどう。
きっと、今頃彼は絵に没頭しているはずだ。邪魔しちゃいけない。
雅斗が私の知らない世界にいることが少し寂しい。
でも……。
「冴子」
「えっ……」
「入っておいで」
足音を立てずに来たつもりだけれど、突然声をかけられて驚く。
「ごめん、邪魔したよね」
少しドアを開けて顔をのぞかせると、雅斗は私の方へ歩いてきた。
「そんなことないさ。サンキュ、時間くれて」
あれ、バレテル?
彼の手には絵の具がたくさんついている。
会社では線画は手書きしても、色つけに関してはパソコンですることがほとんどだから、すごく新鮮だ。
そして、画家、木崎雅斗を垣間見た気がするのだ。
やっぱり彼には絵筆が似合う。
「なに、描いてたの?」
私がそう聞くと、優しく微笑んだ彼は私の手をとってキャンバスの前に立たせた。