あなたのギャップにやられています
下手すぎる嘘
朝食を食べ終わると、ふたりで一緒に家を出る。
ふたりともデザイン部の時は、交際がバレて異動になったら困ると、一応隠してきた。
といっても、同じ仕事に携わっていた私たちは、一緒にいたところでそういう目で見られることはなかったのだけれど。
だけど、私が経理に異動になってからは、あまり気にせず一緒にいた。
ところが、意外と誰も気がつかないらしく、一度も指摘されたことがない。
気にしているのは、本人だけだったということなんだろうか。
全く気付かれないのも、ちょっと寂しいものだけれど、あれこれ聞かれたりという面倒なことにはならないから、いいのかもしれない。
「木崎さん、おはよう」
「奥田さん、おはようございます」
エレベーターホールで偶然出くわした奥田さんに、声をかけられる。