あなたのギャップにやられています
「昨日の件って?」
雅斗から逃れたと思ったのもつかの間、今度は奥田さんの質問だ。
「あっ、えーっと……ちょっと私も携わっていたクライアントの件で」
「へぇー。木崎さんも忙しいんだね」
ふぅ。なんとかごまかしたけど、あの言葉を囁いたときの雅斗の意地悪そうな顔ときたら!
嫉妬してくれるのはうれしいんだけど、すごく困る。
奥田さん関連では、ドキドキしっぱなしだ。
その日のお昼前、私のデスクの内線が鳴った。
「はい、経理木崎です」
『もしもし、戸塚です』
「部長!」
『もうすぐ昼休憩に行くけど、冴子も出られるか?』
もちろんふたつ返事だった。
きっと雅斗のことだ。
12時少し前からじっと時計とにらめっこして、針が12時ぴったりを指した瞬間、経理を飛び出した。