あなたのギャップにやられています

「昨日の件って?」


雅斗から逃れたと思ったのもつかの間、今度は奥田さんの質問だ。


「あっ、えーっと……ちょっと私も携わっていたクライアントの件で」

「へぇー。木崎さんも忙しいんだね」


ふぅ。なんとかごまかしたけど、あの言葉を囁いたときの雅斗の意地悪そうな顔ときたら!
嫉妬してくれるのはうれしいんだけど、すごく困る。

奥田さん関連では、ドキドキしっぱなしだ。


その日のお昼前、私のデスクの内線が鳴った。


「はい、経理木崎です」

『もしもし、戸塚です』

「部長!」

『もうすぐ昼休憩に行くけど、冴子も出られるか?』


もちろんふたつ返事だった。
きっと雅斗のことだ。

12時少し前からじっと時計とにらめっこして、針が12時ぴったりを指した瞬間、経理を飛び出した。

< 510 / 672 >

この作品をシェア

pagetop