あなたのギャップにやられています

そのまま彼の上に倒れこむような形になった私を、雅斗が抱きよせる。


「ヤベー、すげーうれしい」


いつものような高いテンションではなく、囁くように言う彼の胸に頬をくっつけて、しばらくじっとする。

彼との関係がここで始まったのは、まだ寒い頃だった。
ということは、半年以上は経ったんだ。


雅斗といると楽しくて、どれだけ仕事が大変でクタクタでも、なにかを作り出す喜びというものも味わうことができた。

経理に行ってからも、頑張れたのは雅斗がいたからだ。

時々雅斗は、家に持ち帰ったデザインを私に見せて意見を求めた。
それは、デザイン部を離れた私を気遣ってのことだと思う。
やっぱり、デザイン部の仕事が大好きだったから。

そんな彼の心遣いがあったから、経理にいてもイーイマージュという会社に所属できる喜びを感じることができたのだ。
苦手な数字と黙々とにらめっこしているだけだったら、決して楽しくはなかった気がするのだ。


雅斗もそれからはなにも言わず、私の髪に手を入れて梳きながらじっとしている。
彼の心臓のドクドクする音を聞いていると、なんだか安心する。

だけど、私が決断しなくちゃ。

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