あなたのギャップにやられています
やがて玄関のチャイムが鳴って、タクシーが到着したのがわかった。
「雅斗、それじゃあ行くね」
押入れに隠しておいたいくつかの荷物を取り出して手に持つと、重くて重くてふらついてしまう。
だけど、もっと重いのは、私の気持ち。
私が荷物を持つ様子を、雅斗は目を見開いて見ている。
「冴子、お前……いつから準備してたんだ?」
私はその質問には答えなかった。
もう、なにを口にするのも、辛すぎて。
顔を伏せると、雅斗は私に近づいてきて……。
「冴子」
その瞬間、私は彼の腕の中にいた。
お願い。優しくしないで。決心が揺らぐから。
「冴子、俺……無理だ。お前がいないと、俺……」
私だって、もうあなたがいない生活なんて考えられない。
だけど、きっと今が決断の時なんだよ。
「雅斗、行くね」
これ以上ここにいたら、きっと別れを考え直すように説得されてしまう。
だって、私も別れを望んでいないのだから。
「冴子、俺……」
「今までありがとう。雅斗」
私は雅斗の胸を押して離れると、振り向くこともせず、そのまま部屋を出た。
少し大きめの絵を抱えながら、タクシーの中でも涙が止まらず、運転手さんに心配されるほどで。
雅斗は追いかけてはこなかった。
おそらく、私の決意の強さを感じたのだろう。