あなたのギャップにやられています
次の日は気持ちを切り替えて出社した。
女ひとりで生きていくには、お金がいるもの。
雅斗以外の男の人と新しい恋愛をなんて、今の私には少しも考えられなかった。
「おはようございます」
いつもは雅斗と一緒だった出社も、残念ながらもう叶わない。
そう思うと、溜息が漏れそうだったけれど、無理やりテンションを上げた。
とにかく明るくしていないと、自分が壊れてしまいそうで怖かったからだ。
その日は幸い、デザイン部にかかわる仕事はなく、ホッとした。
経理に缶詰になっていれば済みそうだ。
お昼前に戸塚部長からまた内線が鳴る。
アポがあって、ランチを一緒にというのは無理だけど……と近くの喫茶店に呼び出された。
なにか進展があったに違いない。
十二時きっかりに経理を出て、指定された近くの喫茶店に向かう。
ドキドキしながら店に入ると、もう部長はコーヒーを口にしていた。
「遅くなりました」
「おぉ、冴子。悪いな時間がなくて」
「いえ、こちらこそ、すみません」