あなたのギャップにやられています

だけど……会社を辞めていくだろう雅斗は、きっと有給消化しつつ準備するものだとばかり思っていた。
それに、今抱えているデザインだって、仕上げていくのだろうし。

一週間しかないとなると、徹夜覚悟なのかもしれない。

この間見せてもらったデザインは、まだこれから色を乗せるという状態だった。
繊細な色使いにこだわる雅斗は、ここからいつも時間をかけるのに。

雅斗がどれだけ忙しくても、あんなにくだらない言い訳をして彼に別れを告げた今、私にそれを手伝うことはできない。

もう、神に祈るしか、なくなったのだ。



それから、雅斗と会社でばったり会うということもなかった。

元々フロアの違う私たちは、必要に迫られてそれぞれの階にでも行かなければ、あまり会うことなんてないのだ。


デザイン部への伝達も、うまく奥田さんに頼んだ。
私が誰かに物を頼むなんてことなかったから、彼はちょっと勘違いしたようだけど、この際、目をつぶって。

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