あなたのギャップにやられています
「冴、ちゃん」
気がつくと涙が止まらなくなっていた。
もう牛肉のたたきどころではない。
「私、私ね……」
心配そうに私の顔を覗き込む百合ちゃんが、さっき自分で使ったハンカチを差し出してくれる。
「雅斗のこと、大好きなの」
今だけ許して。
もう二度と口にしないって決めたのに、そんな決心、脆すぎて。
「バカね、あんた」
そう言いながらも、百合ちゃんまで涙を流してくれる。
「本当に……あんたたちふたりとも、大バカ者よ」
バカでもなんでもいい。
大好きだから、雅斗には夢をつかんでほしいの。
しばらく涙の止まらない私を、百合ちゃんがじっと待ってくれる。
「そのハンカチ、もう冴にあげる。
新しいの買って返しなさいね。あ、ユニクロじゃだめよ」
涙やら鼻水やらでグチャグチャにしてしまったハンカチをそう言うのは、多分、私の気持ちを落ち着かせるためだ。
百合ちゃん、やっぱりカウンセラーになったらいいのに。