あなたのギャップにやられています

「どこのならいいの?」

「そうねぇ……エルメス……」

「却下!」

「はやっ」


クスッと笑い声を漏らすことができるのは、百合ちゃんの心遣いのおかげだ。


「雅斗君、いつ?」

「明日、発つんだって」


部長が飛行機の時間も教えてくれた。
あとは冴子が好きなようにしろと。


「明日って……冴、そんな気持ちのままでいいの?」


私はしばらく口を開けなかった。
本当は嫌だ。
だけど、私が雅斗に会いに行ったりしたら、せっかくイギリス行きを決意した彼の気持ちまで揺らぐ気がして、ためらわれる。
それに、泣かずに見送る自信もない。


「冴」


私のことをすっかり呼び捨てにしている百合ちゃんは、膝の上で握りしめていた私の手をギュッと包み込んだ。


「ん?」

「私は冴の味方。あなたがどんな判断を下しても、そうと決めたなら応援する」

「百合ちゃん……」


その日は、私のことを心配する百合ちゃんが「私の部屋に泊まりなさい」と盛んに勧めてくれたけれど、百合ちゃんも一応ついてるし……丁寧にお断りした。

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