あなたのギャップにやられています
新しく借りたマンションには、物がなにもない。
あるのは、着替えと身の回りの生活用品だけだ。
雅斗の部屋に転がり込んだ時、家具や電化製品はふたつあっても仕方がないと処分してしまったからだ。
「炊飯器、買わなくちゃ」
リアンから帰ってきた私は、リビングの床にそのまま座り込んだ。
なんだか力が抜けてしまったのだ。
雅斗と座ったソファがもう懐かしい。
せめてアトリエにあったくらいのサイズのソファも欲しいな。
そして、リビングからキッチンを眺めながら、あれこれと考える。
キッチンの調理道具だって、なにもない。
まずはお味噌汁が作れるように、鍋とお玉がいる。
雅斗特製のふわふわのオムレツを作るには、フライパンもいるし、よく切れる包丁も欲しいし……。
だけど、考えれば考えるほど、雅斗のことを思い出してしまう。
「雅斗のお味噌汁、美味しすぎるんだもん」
ポロッと涙がこぼれた。