あなたのギャップにやられています
「体壊すって言ったじゃない」
思わずぼそっとつぶやいたけれど、それを聞いてくれるはずの人がいない。
マスターの言った通り、この絵はきっと私に描いてくれたんじゃないかって思う。
自惚れかもしれない。
だけどここに描かれているふたりは、きっと私と雅斗に違いない。
リアンを出るとき、百合ちゃんが「自分の考えに自信を持ちなさい」と言ってくれたことを思い出す。
私……やっぱり雅斗が好き。
好きで好きでたまらない。
だけど、いやだからこそ、この決断はきっと間違ってはいないはずだ。
私はもう一度自分の気持ちを確認した。
「あれ?」
暑くてたまらなくなって目を開けると、窓から直射日光が降り注いでいた。
ここ何日か頭を悩ませてろくに眠っていなかったせいか、マスターからもらった絵を握りしめながら眠ってしまっていたようだ。
時計を見ると、もう朝の九時だ。
ヤバー。化粧も落としてない。
慌てて洗面台に向かおうとすると、チャイムが鳴った。