あなたのギャップにやられています
第5章
高鳴る鼓動
「ちょっと冴、あんた益々ザルの目が荒くなってきたんじゃない?」
私からビールのジョッキを取り上げるのは、ドンドン女らしくなっていく百合ちゃんだ。
体型は相変わらずだけど。
「そんなことないわよー。
でも、もうやめとこうかな。帰って勉強しないと」
「こんな酔っぱらいが勉強できるわけないじゃん」
「あはは。see you」
最後に残っていたチキンをパクッと口に放り込んで、リアンを出る。
「頑張りなさいよ、中学生英語」
「Thank you」
雅斗がイギリスに発ってからもう半年が経った。
当然のことながらなんの連絡もないけれど、戸塚部長のところには一度だけ連絡があったようだ。
元気でやっていると一言だけだったらしいけれど。
あれから私は経理でなんとか頑張りながら、空いた時間に英会話を習い始めた。
それがなんになると聞かれたら、「さぁ」としか答えようがないのだけれど、この英語の苦手な私がせっかく思い立ったんだから、やるしかないでしょ。