あなたのギャップにやられています

「逃がさない」

「ダメ……あぁぁっ」


私の顔の横についた彼の腕の筋肉の筋がくっきりと浮きだっていて、思わずしがみつく。


「どうした?」


彼は私を心配するような言葉を口にするくせに、なんだか生き生きとしているように見える。


「んっ、あっ」


私がなにも言えないでいると、不機嫌そうな顔をした雅斗は「まだ足りないんだな」と意地悪そうにつぶやいて私を快楽へと誘った。


「冴子?」


彼とひとつになれたとき、こぼれていく涙を隠そうと横を向いて枕に顔を押し付けた。


「冴子……」


けれど、繊細な彼が気がつかないわけがなく、すぐに顔を上げさせられる。


「辛い思い、させたよな」


そう。すごく辛かった。
大好きな人に自分から別れを切り出さなければならなかったことも、彼に成功のおめでとうすら言うことができない状況も。

そして、もう二度と誰かを愛することができないかもしれないと感じてしまったことも。

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