あなたのギャップにやられています

「おはようございます」

「木崎さん、おはよう」


堀川さんは手にしていた絵から私に視線を移して、挨拶を返してくれた。
少し早かったのか、画廊には私と堀川さんしかいない。


「掃除始めますね」


いつものように、仕事は掃除から始まる。

どれも大切な絵なのだ。
雅斗が全身全霊を傾けて絵を描くのを見ていた私は、どんな無名の画家の作品でも大切にしたいと思う。


いつもの掃除をするだけのことなのに、雅斗に会えたせいか、すごく活力が湧いてくる。


「今日、次の個展のことで画家が訪ねてくる」

「そうなんですか? 楽しみです」

個展、か。
雅斗もいつかここで個展を開いてくれたら最高なのに。なんて勝手に思いを巡らせる。

フフフンフン。

勝手に鼻歌まで飛び出してしまうのは、やっぱり雅斗の力だ。


「木崎さん、今日は随分ご機嫌だね」

「えっ? 普通、ですよ」

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