あなたのギャップにやられています

「さーてと!」


私の唇を解放した彼は、一瞬だけ真剣な顔で私を見つめた。
その視線に心臓がドクンと打った瞬間、いつもの調子の彼が戻ってきたようだ。


「初デート行くよ」

「デート?」

「そそ、ずっと夢だったから。冴子と手をつないで出かけるの」

手を、つないで……。
あんなことこんなことされたくせして、木崎君と手をつなぐというだけでなんだか照れる。


「とりあえず、元彼ジャージはごめんだから。家に寄って?
あっ、冴子をここにひとりで置いておけないから、とりあえず俺ん家に来るんだよ? 
また車で荷物を取りに来るとして、最低限必要なものだけ用意して?」


そう言うと彼はそこで元彼ジャージを脱ぎ始める。


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