あなたのギャップにやられています

戸塚部長も駆け付けてくれて、「ついでによろしく」なんて第一号の仕事をくれた。
あの時踏み出した一歩が、こんなにも素敵な時間を作ったのだ。


個展の最終日、「星からの手紙」の仲間と一緒に打ち上げをすることになった。


「先行ってるぞー」

「はーい。すぐに行きます」


残ったのは私と雅斗。
最後のお客様に手間取ったのだ。


「雅斗、急いで。皆、待ってるから」

「冴子、ちょっと」


急いで画廊を出ようとした私を雅斗は引っ張った。


「どうしたの?」

「ずっとイギリスの美術館で足止めを食らってたんだけど……」


彼が奥から持ってきたのは、まだ梱包されたままだったけれど、どうも絵の様だ。


「雅斗、これ……」

「本当はこれに賞をつけてプレゼントしたかったんだ」


その絵は、戸塚部長が見せてくれた美術雑誌に掲載されていたものだ。
「こっちが本命だった」と雅斗が語ったあの女の裸体。

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