あなたのギャップにやられています
飯を食えなければ、仕事ではない。
ただ、好きな絵を描いているにすぎない。
ひとりのときはそれで良かった。
だけど、冴子との将来を考えると、そうは言っていられない。
いつかふたりの子供だってほしい。
そう考えると、イーイマージュの安定した報酬を投げ捨てて留学なんて、簡単には踏み出せない。
だけど…最初で最後かもしれないチャンスを、簡単には捨てられなかった。
それに気が付いた冴子は、俺の背中を押すための作戦を立てたらしい。
勝手に部屋を出て行った冴子に、最初は苛立った。
絵は大切だ。
だけど、それ以上に彼女のことが大切なのに、どうしてわかってくれないのかと。
だけど、ひとり残されて冷静になると、冴子の心遣いが痛いほど身に染みた。
そして俺は…自分に勇気がないだけだと知ったのだ。